魚屋の大将

よく行く魚屋がある。いろんな魚を陳列しているので見ているだけで面白いのだが、どれも美味しくていつも感動している。たとえば「たかべ」の塩焼きは最高だった。

魚屋の大将は80代だと思われる。いつも立ち仕事、店頭で魚をさばいている。寡黙で口数は多くはないが、見るからに元気で健康そう。体さばきがしっかりしていて、とくに耳の良さは常人的でない。

日本人の食の好みが変わった。大将はそう言う。「いまは脂っこい魚が好まれる、昔はアカムツ(ノドグロ)よりクロムツだった」のだそうだ。「アブラボウズなんて私たちにとっては下魚だったんだよ、あんなの食べたらお腹壊すっていってね」「なにかきっかけがあったのですか?」「ハンバーグじゃないかと思う、肉汁で脂っこいでしょう、あれで日本人の感覚が変わったと思ってる」「大将の好きな魚はなんですか?」「わたしはやっぱりサワラだね、上品だよね」

美意識が強く、約束を守る。わたしは大将をリスペクトしていて、大事にしている。